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思想の放流

あの人だけは恋をしないでほしかった。/読書感想文

※ネタバレ注意

 デ(略)7巻を読んだ。

 正直、6巻の時点で違和感はあった。作者特有の個性的なセリフや演出、展開が減り……うまい言葉が見つからないが、なんとなく「現代に迎合しようとしている」ような感じがしたのだ。

 だが、最後のページの衝撃で全てを許した。「人類終了まであと一ヶ月」その言葉に私は救われた。きっと次巻では、元のデ(略)に戻ってくれるだろう、と。

 しかし、実際に読んでみるとどうだろう。一言で言うと、「期待外れ」。一年以上待った甲斐が無い、とすら思った。前巻同様に心に突き刺さる表現が少なく、絵と演出のうまさだけが元のままだった。

 特に残念だったのが、おんたんと大葉くんの告白と、おんたんが実は過去から来ていた、という展開である。

 女子大生が人外男子に、海辺で「すき!!!!!!!!!!」と叫ぶ。普通の恋愛漫画であったら、私は萌えただろう。

 普通の少年漫画で、「主要登場人物が実は過去人だった」という話になったら、私は感動しただろう。

 しかし、これは恋愛漫画でも少年漫画でもない。あの作者はそんなにポップなものは描かないだろう、と信用して買っているのだ。なんだか、勝手に裏切られたような気分である。

 これも勝手な話なのだが、私は、おんたんにだけは恋愛をしてほしくないと思っていた。別に門出が渡良瀬先生の家に泊まったっていい。キホや亜衣ちゃんが誰と付き合ったっていい。でも、おんたんだけはそういうことと無縁でいてほしかった。

 五巻でおんたんと大葉くんがキスをした時も、少し嫌だった。どこ目線で読んでいるのかはわからないが、おんたんが男に「取られた」と思ったのだ。でもあれは、言葉も何も無い、ただの行為だったから許せたのだ。照れたおんたんが可愛いとすら思った。

 でも、「すき」は違うだろ?君にはこんな、普通の青春は似合わない。全ての一番は門出じゃなかったのか?リア充をブッ殺すと言っていた、あの頃の君はどこに行ってしまったんだ。

 好きな人や物がなくなってしまうより、存在したまま望まぬ方向に変わってしまう方が悲しい。これを初めて実感できただけでも、良かったのだろうか。

 もしかしたら、作者自身もこの漫画に飽きているのかもしれない。この先どんどんありふれたものになっていくかもしれない。

 しかし、こうは私は八巻以降も買い続けるだろう。別に面白くないわけではないのだ、ただこの作品に求めているものが無くなってしまっただけで。

 チープでポップな浅野いにおなんて、見たくない。

 こんなことになるなら、五巻で打ち切られたほうがよかった。